葬儀で出す食事に関する基礎知識~精進落としの意味とは~

故人を送り出すお別れの儀式である葬儀。そんな葬儀の場では、お茶やお菓子からはじまってお膳など、食べたり飲んだりするタイミングが多く設けられています。お茶やお菓子を出すのは「長丁場になるから何か食べておいて」という意味もありますし、参列者への心遣いという意味もあります。地域によって特定のお菓子などを用意することもあり、葬儀での飲食は自宅での飲食や仲の良い知人同士との食事会とは、また一風変わった印象があるのではないでしょうか。

 

葬儀で供されるお膳も、葬儀特有のものです。仕出し店にお願いするお宅も多いため「結婚式やお祭りと似たようなものが出ている印象がある」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、じっくりと御膳の料理を見てみると、結婚式やお祭りとお料理の内容が少々違っていることに気づくはずです。

 

今回は、葬儀での飲食についてお話します。葬儀で出すお食事にはどんな意味があるのでしょうか。また、どんなお料理を中心に並べるものなのでしょうか。

精進落としの意味は「一区切りの食事」

葬儀で出すお食事を「精進落とし」と言います。

 

精進落としの本来の意味は、「精進潔斎の終わりの食事」というものでした。精進潔斎とは、神事などの前に身を清めるためにお酒や肉などを断つことです。この身を清めて臨むべき行事が終わり、お肉やお酒をいたくことができるようになった時に「精進潔斎、これにて終了」という意味で、「精進落とし」の食事をいただきます。

 

また、昔は、忌の期間は基本的に肉や魚を口にせず、質素な精進料理を食べていました。「四十九日の忌中期間、これにて終了」としていただくお料理を同じく「精進落とし」と呼びます。つまり精進落としの意味は「精進潔斎の必要な行事や忌が終了し通常のお食事に戻るためのお食事」「一区切りのお食事」です。

葬儀における精進落としの意味とは

精進落としの意味を考えれば、必ずしも葬儀の席だけで使われる言葉ではないと分かっていただけるはずです。「お祭りだろうが忌だろうが、体を清め喪に服するような期間が終わる際の食事」「お酒や肉、魚を断つような期間が終了する時のお食事」だと考えると分かりやすいのではないでしょうか。

 

現在は一般的に「お祭りの前だから精進潔斎しよう」というお宅はまずありません。忌中だからと、朝昼晩のお料理を、肉や魚を使わない精進料理に変えるというお宅もほとんどありません。「精進落とし」の意味は、「葬儀で供されるお食事」という意味で使われるようになっています。特に仏教式の葬儀で「精進落とし」という言葉が使われます。

 

仏教式の葬儀では食事を出すことが重要な意味を持ちます。精進落としを出す意味は、「料理を振る舞うことで徳を積むため」「参列者やお坊さんへの労いのため」「参列者を清めるため」だからです。

 

ただ、葬儀の一連の流れの中で出てくるお食事が全て「精進落とし」の意味を持つわけではありません。通夜で出るお食事は「通夜ぶるまい」と呼ばれ、精進落としとはまた意味の違ったお食事になります。「精進落とし」と「通夜ぶるまい」では、メニューも異なるのが一般的です。

精進落としにはどんなお料理が出るの?

精進落としにはどんなお料理が並ぶのでしょうか。

 

精進落としの意味に添ってメニューが決められているのかと思いきや、現在は一般的に「和食のお膳」というかたちで出されることが多く、会合やお祭りなどの行事で出てくるお料理と大きな差はありません。ただ、地域によって精進落としは葬儀で供される食事という意味であることを考えて、肉や魚を控えめにすることもあります。精進落としの意味よりも地域の風習を重視して、伝統料理などが振る舞われることもあります。

 

一般的な精進落としのメニューは、「天ぷら」「お刺身」「お漬物」「お吸い物」「煮物」「酢の物」「焼き物(焼き魚など)」「茶碗蒸し」「ご飯」「サラダ」「ゼリー」「果物」などです。メニューをざっと見た印象として「普通の和食のお膳だ」と感じませんか。

 

精進落としの意味が主に「葬儀で出るお食事」に変化している現在、メニューに関して厳格な決まりは特にありません。ただし、精進落としの意味が葬儀中のお食事であることを考えて、お祝い事を連想させる食材は避ける傾向にあります。

 

鯛や伊勢海老などは、まさにお祝い事の食材の代表格です。精進落としの意味を考えて、メニューには鯛の焼物や伊勢海老のお刺身などは基本的に並びません。確かに、精進落としの意味が葬儀中の食事なら、鯛や伊勢海老が出てきたら驚いてしまいますね。

 

伊勢海老が避けられる食材だからといって、海老全般が避けられるというわけではありません。精進落としではよく海老の天ぷらやお刺身が並びます。鯛も同じで、おめでたい真っ赤な鯛がそのまま料理に並ぶことはほぼありませんが、魚自体が駄目というわけではありません。お刺身や焼き魚は精進落としの定番メニューです。

葬儀で精進落としを用意する時の注意点

自分が喪主になって葬儀を出す際は、精進落としの意味を考えてメニューを選ぶ必要はありません。仕出し屋や葬儀屋では価格ごとに精進落としを用意しています。レストランでコース料理を予約する時のように、価格と料理内容を確認し、仕出し屋や葬儀屋に人数と希望のコースを伝えれば用意してもらうことができます。

 

価格の相場は、一人あたり3千円からと言われています。人数や予算に合わせて見積もりを作成してもらい、後で「支払額がまったく違っていた」ということのないように注意しましょう。

 

基本的にお酒は別料金です。飲み物を含めると価格がどう変わってくるのかをよく確認しておくと安心です。

最後に

精進落としの本来の意味は「忌事や身を清める必要のある行事の終わりに食べる食事」というものでした。精進落としの意味や言葉は葬儀でだけ使われるものではなく、お祭りや神事でも使われていました。しかし、現在はお祭りのために精進潔斎をする人もほとんど存在しませんし、喪中だからといって朝昼晩の食事の献立をわざわざ精進料理に変えるお宅もありません。「区切りの食事」として「精進落とし」という言葉が使われることも少なくなりました。

 

精進落としの本来の意味とは異なりますが、精進落としは「葬儀で供される食事」という意味で使われています。やんわりと「精進落としは葬儀で出る食事の意味」と解釈しておけば問題ありません。ただ、「精進落とし」と「通夜ぶるまい」の意味は異なります。そこだけ混同しないように注意しましょう。

 

葬儀では日常ではなかなか使わない言葉や、意味にほとんど触れたことのない言葉もたくさん登場します。「精進落とし」の意味なども、その一つでしょう。

 

普段あまり触れる機会がなくても、意味や言葉は決して難しいものではありません。それに、葬儀の席では、故人を和やかに送り出すことが一番です。「精進落としの正確な意味を理解しなければ」と慌てる必要はありません。心を尽くし、食事を味わい、故人の冥福を祈ると共に和やかな食卓と会話で故人を送り出してあげてください。